『歪んだ世界』
あの子は変わった。
丁度、大学に入って2回目の紅葉を見た季節だった。初めは化粧が濃くなったなと感じるだけだった。おかしいなと思い始めたのは、いつも出ていた一限に出ていなかったことからだ。LINEの返信も遅くなった。
「ねぇ〜、みさとぉー。今日、ランチ行かない?」
『え、いいけど。』
講義が終わったあと、あの子から電話が来た。
カフェに行くと、彼女はヒラヒラと手を振った。久しぶりに会ったあの子の眼は、闇に堕ちていた。
「久しぶりぃー。」
『久しぶり…。』
気まずいながらも、久しぶりに沢山話した。話をしてくれるのが嬉しかった。
「あぁ〜。やっぱみさとおもしろー笑。
あ、あのさ話変わるんだけどさ…お金貸してくれない?」
巻いた黒髪を指でいじりながらあの子はそう言った。
『え?なんで、?』
「いやぁ、明日締め日でさ。担当NO.1にしたいから。」
『…は?』
「あ、担当って、ホストね。…あたしの担当見る?ちょぉかっこいいんだよねぇ。」
「将来、、結婚するの。だからお願い。貸して。」
『…いくら?』
「じゅぅまん…だめかな?」
お願いって手を合わせてお願いされた。
締め日って…きっとホストのことだ。
目の前で目をキラキラさせて見つめる彼女。
キラキラした瞳と相対的にあの子の顔が歪んでいく。私じゃダメなんだろうか。
【可愛い子猫】なんていわれなきゃ、あなたの心は満たされないのだろうか。それほどまでに、あの子はこわれていたのだろうか。
「私がやらないと、、、。」
目の前で全部がぼろぼろになった子猫は、暗転したであろう世界で、笑っていた。
穏やかなあの子の日常はもう、狂っているようだ。
【子猫】
11/17/2024, 8:58:40 AM