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もう二度と


『もう二度としないからっ!』


なんて、彼の口から聞いたのは、つい1ヶ月前のこと。

「もう絶対しないから!許してほしいっ!」

と、懇願するのが、現在の彼。
ワックスでおしゃれに遊ばせた茶髪の頭を下げ続ける彼に、俺はじわりと心中に広がる失望を吐き出すように、溜息を零した。

派手な恋人の幾度となく、繰り返される浮気に。
俺は、完全に失望している……筈なのに。

別れよう、もう、俺達の関係を終わりにしよう。

そんな言葉が脳裏に過ぎるのに。

「……そんな言葉、信じられないよ」

なんて、弱々しい、震えた声が出るだけで。

そうなると、彼は決まって言うのだ。

『じゃあ、信じさせてあげる』

俺にはやっぱり、お前が1番だよ、と。

涙が滲む俺の、わなわなと震える唇に、そっとキスを落とす。
そして、されるがままに抱き締められると、俺はまた、浮気性の彼を許してしまうのだった。


End

3/25/2025, 3:51:26 AM