未知亜

Open App

 視界の隅に、はらはらと黄色が落ちる。目を上げるのを待ち構えたように、何十枚というイチョウの葉が目の前に降る。地面がざあっと波立った。
 毎日歩いている通勤ルートだった。つい昨日まで黄色率はほぼなかったはずだ。自分が気づいていなかっただけだろうか。
 一足踏み出すたびに足元がカサコソと鳴る。すれ違う小学生がスニーカーの先で落ち葉を蹴り散らかす。街路樹は残らず紅葉したわけではなく、緑の葉ばかりの樹もあった。日当たりの違いだろうか。緑も黄も青空に映えて、葉先を風にそよがせている。
 メッセージアプリを既読で止めたままスマホを閉じ、しばし鮮やかな色彩を見ていた。

『落ち葉の道』

11/26/2025, 8:52:21 AM