のねむ

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君と一緒に居たかった。
前と変わらない君と。けれど、君は変わってしまった。
見た目を変えて完璧に近付いた、いや、完璧になった君を、私はどう思えばいいのだろう。

世間一般的に見れば、完璧になったのだと思う。美しく優雅で、どこか浮世離れした容姿と性格。一度声を聞いてしまえば忘れられぬ風鈴のようなその声で、たった一声出すだけで人を天国へ地獄へも連れて行く。
君は前からずっと、私の憧れだった。私のなりたい人物像をそのままこの世へ連れてきたような、そんな人。
君になりたい。君になれない。だから、君は一生変わらずにそのままでいて欲しい。君の席を空けないで、ずっと君だけで埋めていて欲しい。
何気ない日常を何時も初めて体験するかのように、美しくキラキラと目を輝かせて見ている君の世界は一体、どんな風景なんだろうか。似たような感性を持っているのに、君のように完璧に思い込めない私は一体、何者になるのだろう。



君は世界に見つかってしまった。
人間の様で人間じゃない。その摩訶不思議で面白い感性は、未熟な私たちを新しい世界に連れていってくれる。
だからこそ、皆から求められた。

嗚呼、変わった。変わってしまった。

完璧になったのに、完璧にならなかった。君は、一体何者になったのだろう。
ずっと、君と一緒に居たかった。何も変わらない君と。








─────────

お久しぶりです。生きてます。何とか。

嫉妬するくらい私の望んだ感性を、声を持つ人がいるんです。前はもっと落ち着いた容姿をしていたし、皆と話をするのもあまりない。そんな人。
面白いくらい完璧で、この人以上に人間を感じないのに人間で、だけどやっぱり人間じゃない、みたいな人は居ないんじゃないかって
でもやっぱり、形あるものはいつか崩れる。

形があったから、あの人は変わってしまった。派手な容姿になったし、皆と沢山お話するようになった。
嫌だって訳じゃないけれど、変わらないでいて欲しかったって思う部分もあるんです。
結局、誰のものでも無い、孤高な人でいて欲しかったっていう私の願望。欲の表れだったんでしょうね。
あの人が、昔のあの人を置いてどこかに行くんじゃないかって、たまに不安になるんです。

あの人の席に、過去の自分だけを座らせて、足早に去っていくんじゃないかって。
まるで、他人になったみたい。

君になりたい私を馬鹿にされた気分だ。
羨ましい。羨ましい。嫉妬だ。君になりたい。
だけどなれない。だから、せめて君以外の人にその席を譲らないで、変わらない君だけが、ここにいて欲しい。


って、こんな私を見てもきっと「自分の感情に素直になれるのはとっても素敵なこと」なんて言うんだろう。笑えてくる。
私は一生、何度生まれ変わっても君にはなれない。

だから、永遠に死にたい。
叶うのならば、形のないままに。

1/7/2024, 8:55:37 AM