タイムマシーン、と手書きで書かれた段ボールが居間に転がっていた。
窓がくり抜かれており、箱の中にはこれまた手書きの操作盤がある。覗き込めば、優斗が体操座りで中にいた。
「出てきなさい。ご飯だよ」
「父さん」
父さん?
いつもはパパって呼ぶのに。
優斗は顔をあげて俺の方を見た。いつもより妙に大人びて見えて、どきりとする。
「画家になるの、あきらめたんだね」
「優斗、おまえ」
嫁にも話したことがないのに、なぜ。
「会ってきたよ。ぼくが生まれる前の父さんに」
鼻をすする音。
「楽しそうに、お絵描きしてた。幸せそうだった。ぼくがいない時の方が」
「優斗」
かがんで段ボールに入り、幼い子供を抱きしめる。
「そんなことない」
「うそつき」
「そんなことない。パパは、父さんは優斗がいてくれて幸せだよ」
「うそばっかり。絵を描きたいくせに、ぼくのせいにして、にげだして」
優斗の涙で肩が濡れる。そうして濡れたところが冷えていく。
ご飯、温め直さなきゃ。
【お題:タイムマシーン】
1/22/2024, 11:39:46 PM