たまには、僕自身について語るとしよう。
とはいえ、自己紹介はしない。
ただ、僕の心のカケラを置いていくだけだ。
それでも良ければ、読んでいってほしい。
僕は話すのが苦手で、けれど不思議を探すのが好きな子だった。
祖母の語ってくれた物語をなぞって、小さな人を探したり。
読んだ物語を元に、考えた設定を話しながら兄と共に学び屋へ向かった。
きっとそれは楽しかったのだろう。
瞳は輝いていたに違いない。
少し背が伸びてからも、僕は不思議を追っていた。
物語を、そして、それを明らかにする手段として、科学を。
けど、ある時だ、僕は軽い事故にあってしまった。
信号のライトは赤で、身体は思ったより簡単に、歩道へと転がっていった。
まぁ、大した怪我じゃない、少し頭を打っただけだ。
けれど───。
次の日、僕が最初に感じたのは罪悪感だった。
まるで、誰かの人生を奪ってしまったかの様な、違和感。
確かに目の前の景色は自分のものなのに、フィルムを通したかの様な感覚は、僕から自分というものの感じ方を奪ってしまった。
でも、確かに僕は僕なのだ。
家族の顔もわかるし、親友の名前も覚えている。
だけど、どうやら、僕は長いこと不思議に浸りすぎていたらしい。
クラスメイトの顔がわからない、動作の節々に不自然な間が生まれる。
まるで、自分という人物をその場で演じているかの様な日々はいつの間にか、当たり前になっていた。
…まったく、くだらない話しだ。
自分は自分でしかない。
記憶に残っている以上、僕は僕でしかないのに。
誰かであったかもしれない…という違和感を拭い斬る事ができない。
今でも僕は、罪ですらないものを償いたいと思っている。
ここまでいくと、性分というやつなんだろう…
お目汚しを失礼したね、心を探したらこんなものしか見つからなかったんだ。
大丈夫、僕はしっかり現実に生きているから。
今日だって…目の前を舞っていた黒地に翠の蝶の珍しさに、ふっと笑みが浮かんだよ。
君もどうか穏やかに、いい一日を!
『今日の心模様』
4/24/2026, 3:06:38 AM