秘密の標本
ずっと手に入れたかった標本が、何もせずとも自分のもとに来るなんてどんなに願ったことだろうか。その三角の目は、自分と目が合うと優しく弧を描く。まるでそこに収まるのが決まっていたかのように、自然と胸の中に飛び込んでくる。標本にして棚に並べてしまえば、このくしゃっと笑う笑顔に皺が刻まれる過程も、腕の中の息遣いも温度も感じられない。コレクションが好きな自分がどれだけ大金をはたいても得られない、世界一愛おしい自分だけの標本は、今日も元気に息をする。
11/3/2025, 12:43:10 AM