夜8時に舞鶴港を出発し、小樽港へ32時間かけて到着する船旅。
瀬戸内海で育った私にとっては初めての日本海だ。出発して寝室をチェックすると直ぐに甲板に出た。
潮風に吹かれ足元がぐらつく。
フェリーの、中は夏休みなのもあってか、子供達が賑やかだが、ここは船の音とザブンザブンと波の音のみが響いている。
少しずつ港の灯りが小さくなっていき、自分が大海原にぽつんと置き去りにされたような気がして背中がゾクッとした。
船の中には1日半を快適に過ごせるように様々な施設があったが、せっかく海路を進むので、できるだけ楽しもうと思ったけれど、漆黒の海を眺めているとどっと疲れと眠気に襲われ、寝室で少し眠ることにした。
幼子の泣き声で目が覚めた。少し船が揺れていたのが怖いのだろうか。夜中の2時だった。もう港は見えないのかな?と、再び甲板へ出てその漆黒にうねる海にたじろんでしまった。うっかりすると吸い込まれそうな何か見えない魔物でも棲んでいるのではないかと思うほどの威力を感じた。
自分は今、自然の上にいるのだ、
恐れる必要はない。
けれども、畏敬の念を持たねばならない。
「海の神様、ここを通らせて下さい。」そう言って手を合わせた。
翌々朝、無事に小樽港に着いた。
その後も数回、この航路を利用しているが、その度に海の神様に手を合わせている。
#夜の海
8/15/2024, 1:50:33 PM