若葉

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教室でぼんやり頬杖ついていると、
その子が近づいてきた。
…見て!と言って開いた手のひらに、
丸いドングリが乗っていた。

その前年の夏は海外で過ごしていた。
単位のひとつ、短期ステイに参加したのはクラスの10人ほどだった。
滞在の家は皆違ったけれど、参加する学習プログラムの場所が近い同士で、お昼休みなどに会って雑談していた。
自分とその子がそんな関係だった。

性格が正反対なその子とはそれまであまり交流したことがなかったのに、なぜだかとても打ち解けていろんなことを話して過ごした。
都会の片隅の小さな公園に観光客はおらず、外国語で話し続ける我々を時折ビジネスマンたちがめずらし気に見ていった。
真夏の緑が輝いていた。リスがたくさんいてドングリを齧る姿を眺めた。
寂しさは感じなかったけれど、異国の公園に二人ぼっちだった。

卒業が近づく頃には、クラスメイトとの交流もどんどん減った。
その子が話しかけてきたのも久しぶりだ。
…これ。思い出!
そう言って木の実をつまんで少し笑った。
私も少し笑った。

#二人ぼっち

3/21/2024, 10:53:33 AM