一夜の夢

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「いつもありがとう、お父さん」

すっかり背が伸びた娘が、妻にそっくりな顔で笑う。はい、と花束を手渡す姿に、男はどうしようもなく胸が痺れた。

「あ、あとこれも」

娘がポシェットの中を探り、一枚の写真を取り出す。これも、と言った割にはなかなか見せようとしない。

「それもパパにくれるのか?」
「うん……」

何やら上目遣いでこちらの顔色を伺いながら、娘はおずおずとその写真を差し出した。そこに写っていたのは──。

「……これ、」

忘れることなどない、優しい微笑みを浮かべた妻が、娘を挟んで自分と並んでいる。愛する家族の肖像。

「そう、お母さん。AI画像生成ソフトで作ったの──もしお母さんが生きてたら、こんな感じだろうなあって」

大きく目を見開いたまま写真を見つめる男に、娘ははにかんでみせた。男は娘を抱き寄せる。親に甘える時期をとうに過ぎた娘は、それでも照れくさそうに父の背に手を回した。

「ありがとう。ありがとうな」
「うん。大好きだよ、お父さん」

1/29/2024, 11:47:23 AM