はとぽっぽ

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ずっと言いたくて堪らなかった。


その気持ちが溢れたかのような、突然の豪雨。
最悪だ。
今日こそ伝えるんだと、ペダルを意気込むように漕ぎ出した途端これだ。

夏の暑さには丁度良くても、折角エンジンを掛けた心は、その冷たさに『やっぱり』なんて、動くのを止めようとし始めた。
僕の悪い癖だ。
虚しい。思わず足の力も緩みそうになる。

けれど、その足を止める訳にはいかった。
何故かというと、ここが急な坂道であり、後ろには君が一緒に自転車で登っている最中だったのだ。


色んなものを押し潰して、なんとか頂上に登った時だった。
さっきまでの豪雨が嘘かのように、生ぬるい風と共に光が辺りを包んだ。
すると、鈴を転がしたかのような特徴ある声が僕を呼んだ。
振り返ると、雨粒の光に反射する景色と、空を仰ぎ見ながら、笑う君の姿。

笑いながら言う。
見て見て と。
素敵な空だ と。




〈瞬き溢れる世界が見えた〉
あの日見た景色を、僕は一生忘れないだろう。

3/22/2025, 7:38:04 AM