空にどんよりとした重い色の雲があり、シトシトと雨が降り続く中、少女の目に色鮮やかに咲いている花が写る。
-ねぇねぇお母さん、なんで、ここの花とあそこの花は色が違うの?
鼻先に咲いている花とすぐそこに咲いている花を見比べながら少女が不思議そうに隣を歩いている母親に訪ねる。
-それはね、土の成分で花の色が変わるのよ。
母親は自分の肩が濡れているのにも関わらず、傘を少女の頭に被せながら答える。
-そうなんだ、近くにあるのに不思議だね。
まるで、家みたいだね。
少女の言葉を聞いた母親がハッとした顔をする。
母親は、少女が家庭内別居中の私達を例えたのだと考えたら胸が苦しくなった。
生活してきた環境が違えば近くにいても性格は違う。
花や葉、それに根にも毒がある紫陽花を見ながら母親が薄気味悪く静かに笑っている。
-パパが待っているから早く帰ろうね。
母親は、小さい雨合羽を来た少女の手を握り、家のある方へ歩き始めた。
6/13/2023, 12:22:03 PM