「ねぇ、あの噂知ってる?」
「どんな噂?」
「隣のクラスの山田くんに見つめられると恋に落ちちゃうっていう」
「知ってる!どんな人なのかな?」
──そう僕こそが!
学校全体で噂になってるあの山田……の幼なじみの佐藤…です…。幼稚園から一緒なのもあってよくセット扱いされます。僕の周りにはよく女子が近寄ってきます。もちろん山田目当てで…泣きそうです。
最初こそ傷ついていましたが今はもう慣れたものです。なれたら慣れたで寂しいものではありますが…そうでもしない限りメンタルが持ちません…
よく言われるのです。「そこまでして山田と一緒にいてなんになるの?疲れないの?辞めちゃえば?」と。
皆さんは山田のことをクールでかっこいいやつだと思っています。たしかにそれは正しいのですが、それは山田のほんの一部でしかないのです。
二人でいる時には猫さんみたいに雨得てくるところとか実は雷が苦手なところとか、泳げないところとか漢字に弱くて教科書にふりがなをふっているのとか。
とても可愛いのです。すごくすごく可愛いのです。
だから一緒にいるのです。
皆さんに知ってもらいたいと思っているのですが、学校では絶対してきません。なんだかんだ言って僕だけが知っているっていうのも特別感があって嬉しいものなのですが…。
そんな山田が今目の前にいるのです。そして何故かすごく見つめられています。一体どういう状況なのでしょうか!?
──俺は今何をしてるんだ?
自覚は無いが学校内で噂になっているらしい山田…なんだが。俺は今目の前にいるこの佐藤のことが小さい頃から好きだ。佐藤は気づいていない…と思う。
今まで色んなアプローチをしてきたが全く気づいて貰えない。気づいた上で気付かないふりをしてくれてるのかもしれないが、佐藤にそんなことができるとは思っていない。
そんな中噂になっている俺に見つめられると恋に落ちる…ていう話。実際のところは相手にしか分からないし、俺の目には常に佐藤しか入っていないから誰かが恋に落ちたなんて知ったことでは無い。
だからこそ、佐藤を見つめている…のだが。なんの反応もない。脈ナシ…なんだろうけど、諦めるか諦めないかは別の話だと思っている。そうでも無い限り何年間も片想いなんて続けてられない。
いっその事あの噂が本当で俺に恋しちゃえばいいのに…
──すごく見つめられています!!
なんなのでしょうか、なにか怒らせるようなことをしてしまったのでしょうか…
それともあの噂を試して……ってそんなわけないですよねっ!
少し焦ってしまいました。こんなこと考えていたら山田に引かれてしまいます。
でももし、本当に噂のことを信じているとしたら…
なんて…
【噂が本当ならいいのに】
『見つめられると』
3/28/2023, 4:12:23 PM