みけねこ

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ないものねだり
開け放った窓から風が吹き込んで、カーテンを揺らす。
カーテンの動きを追って目をやると、満月と目が合った。
照明の灯りもない部屋に指す、月明かり。
ベッドに横になったまま、満月に手を伸ばす。
当然、その手は空をつかむ。中には何も残らない。
「ないものねだり、か」
一人きりの部屋で、ぽつりとこぼれた声は掠れていた。

ー何がほしいのか、自分自身わかっていないのに。
ー何かが足りないという、感覚だけあるのだ。
ー自分にないものがほしいという、強い願いが渦巻いているのだ。
ー誰でもいいから、このぽっかり空いた胸の穴を塞いで
はくれないか。

黒々と澱んだ心に、白々と月明かりが指す。
その明かりが、胸の穴を優しくさすっていったような気がした。

3/27/2024, 3:21:02 AM