4,「手を取り合って」
「逃げちゃおっか」
そう言って手を取ってくれた君は悪戯が成功したみたいに笑っていて、怖さとか不安だとかそういったものが全て吹き飛んでしまった。
どうせ逃げられないよ、って言おうとした。また大人に怒られちゃうよ、って言いかけた。
なのにさ、ぜんぶを包み込んで安心させるみたいにぎゅって手を握られて。それじゃあもう君についていくしかないじゃんか。辛い現実に背を向けて、たった二人で逃げ出すのも悪くない。
どこへ行こっか。パンケーキとか食べてみたい。海も見に行こう。図書館とか。いいね、かき氷も食べたい。可愛い服買おうよ。ピアスの穴も開けてみよう。学校の文化祭覗きたいな。映画も見てみよ、甘ったるい恋愛映画!
やりたいことがぽんぽん出てきて、未来がきらきら明るく見えて、そうやって二人でくすくす笑った。何だって出来る気がした。無敵になった気がした。
ねえ、もし神さまがいるなら。膨らんだ夢が弾けてしまう前に。まだ二人ぼっちでいられる内に。時間を止めてしまってよ。この子と手を繋いでいればなぁんにも怖くないから、さ。
7/14/2024, 1:49:47 PM