極短SF! お題一つにつき2個!

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美しい鏡でしょう。私が端正に磨き上げました。
新生活に、1万円で、どうでしょう。
要らないわ。全然美しくないし。
美しいでしょう。これがいまなら1万円。
要らん。全然美しくない。
男は午前中から半日街を彷徨っているが、
まるで買い手は見つからない。
さすがに疲れたのでカフェで一服する。
何が悪いのかなぁ。改めて鏡を見る。
鏡に映る顔は人気俳優の顔だ。すこし私に似ている人。
こんな鏡なら、売れると思ったのだが、
なかなか妬み強い人種なのだなぁ。
午後からは、より醜い顔を写す物を売ることにする。
____

美しい女が窓の外に見えた。
窓際の中年サラリーマン。終わった部類の男は、
無性に股間の疼きを覚えた。そういえば嫁とも数年来、
ご無沙汰であったっけなぁ。

生きる希望なんて無かったので、迷いなど生まれるはずがなかった。

何かが割れる音がして、室内で風が吹いた。見るとガラスが割れていて、外に空気がビュウビュウと漏れていく。
どこかでOLが叫んで、誰も状況は読めない。
「吸い込まれるな!ここは80階だぞ!」

みな割れたガラスに気を取られて、あの陰鬱な社員がいなくなったことに暫くするまで気が付かなかった。

下界は、四方に飛び散った男の体と血液と悲鳴とでおぞましい有り様であった。落下した男の下敷きになった女がいるらしく、衝撃で首がもげてしまっていた。
不謹慎であるが、彼女は勿体ないことに美しい女性だった。

結局、男は精神病を患っていて、飛び降り自殺を図った、そして下に偶然居合わせた美女が下敷きとなり死亡してしまった、というシナリオで事件は落着した。

しかし詳しい検死の結果、女性は転落事故の数分前に心臓発作でなくなっていたことが明らかになった。

またまた事件は迷宮入りし、
そして迷宮ごと風化していつのまにか消えた。



1/16/2024, 1:36:37 PM