石灰

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お題『星空の下で』

 うまくいかなくて、なんとも形容し難いグシャグシャになった感情を抱えて、思わず夕闇に飛び出した。
 上着も置いてきてしまって、北風がしみる。近くを歩いている人が二度見したのが目に入るが、今はどうでもいい。


 気が付いたら誰もいない公園のブランコに座っていた。小さな街灯がチラチラと光っている。

 どうして自分はこんなにも寒いところで落ち込んでいるのだろうか。どうして、昨日まで楽しいと思えていたのに今こんなにも辛いのだろうか。

 マイナス思考から中々戻ってこれない。あまりにも女々しくて自分で自分が嫌になった。



 日もすっかり沈み、握りしめたハンカチが水分を含んだ頃。ふと、空を見上げた。

 高いビルが立ち並ぶ都会では実家で見た空よりもずっと狭く、過剰な灯りで霞んでしまっている。
 それでも尚輝きを放ち続ける星々がいる。数は少ないけれど、確かに見えた。

 相変わらずむしゃくしゃするし、涙が止まる兆しは一向に見えなかったけれど。それでももう少しだけこの星を見ていたい、そう思った。

4/5/2024, 10:38:54 AM