M.I.

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No.324『約束だよ』

「約束だよ」
君はそう言いながら僕に小指を差し出した。
僕はそれに倣おうとせず、せめてもの抵抗をする。
「…ね、お願い……」
弱々しくそう告げる君。
木の枝のように細い君の小指が重力に負けてどんどん下に下がっていく。
それを見て僕は思わず手を掴んでしまった。
「………ねえ…小指……」
そう言う君にやっぱり僕は頭を横に振る。
「僕を約束破りの人間にしないでよ。他の人を好きになるなんて絶対ない。僕にはずっと君だけだ」
君の手をぎゅっと握る。
「………ほんとうにじぶんのいしをまげないねぇ……ふふ…がんこで…そしてわたしのいとしいひと……」
君の手から力が抜けていくのが僕の手越しに伝わってきた。
「……っおやすみ、僕の愛しい人……」

6/4/2025, 9:39:54 AM