浜辺 渚

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寂れた引き戸を開けると、視界に入ったのは脱ぎ散らかした子供たちの靴。上框の角は黄色く禿げていて、茶色の床とに不和が生じてしまっている。
自分の靴を靴箱に入れようとすると、靴箱の上に飾ってある小さな写真立てに入った牛のイラストと目が合った。
牛は縦に寝っ転がっているように描かれていて、顔だけがこちらを向いていた。おどけたように誇張された顔は何とも愛らしく、また憎らしかった。
靴をしまうと、買い物の荷物を玄関先のマットに置いた。マットは縁の加工がとれ、かなりほつれてしまっていた。最後に洗ったのはいつだろうとふと疑問に思った。
重い荷物を置いて、一度息を整えた。吸った空気には家の親身な香りが感じられ、吐いた空気には微妙な寂寥感の混じりがあった。
手のひらを見ると、ビニール袋を持っていた細い線が消えずに跡になっていた。その新たな手相には刺青のような象徴性があった。また、同時に無邪気さも感ぜられた。

2/13/2026, 4:21:53 PM