思わず顔がほころぶ春の日差し。
相手を屈服させるかのような夏の日差し。
これからの厳しい季節を予感させる秋の日差し。
そして、厚い雲から弱々しく地表を照らす、冬の日差し。
それは母に似ていた。
幼い私に、周囲の人々への気配り、心遣いを説いてみせるような母。
当時はまだそれらを受け取る側の私だったと気付いたのは、後年だった。
国語のテストで「四季」の漢字が書けずに、「四委」と書いて、99点を取った時、
母は褒めずに嘲笑った。
そんな漢字が何故書けないの?と。
母はできない私を責め、
私もできない自分を責めた。
そんな母は嫌いだった。
同時に愛していた。
正確には愛して欲しかった。母に。
私はそれらを得ることができないまま、
母は死んだ。
冬の日差しに似た、時折見せた母の優しさ。
風呂上がり、母が私の髪を乾かす時、
ドライヤーの温風や冷風を、戯れに
私のパジャマの襟元から差し入れ、
くすぐったがって私は笑う。
母も一緒に笑う。
思い出は数少ないが確かにあったのだ。
冬の日差しに似た、母の不器用な愛だった。
7/2/2023, 1:36:30 PM