シオン

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「みず、うみか⋯⋯⋯⋯⋯⋯???」
 知らない場所に行ってみようと思って適当に決めた方向になるべく真っ直ぐ歩いていったら湖があった。
 透明な水が光を反射してキラキラと光っている。
「きれいだな⋯⋯」
 思わず口に出てしまうほどにきれいな光景。
 長いことここに居るはずなのに、全く知らない場所で、もう少し奥の方に行ってみようと湖の周りを歩こうとした時声がかかった。
「演奏者くん」
 湖から来た方へ一メートルほど離れた場所に権力者が立っていた。
「やぁ、権力者。きみもこの場所知ってたかい?」
「うん。知ってた」
 彼女は微笑んで言ったけれど、立っている場所から微動だにしない。いつもは僕の方に近づいてきて何か冗談の一つを言ったりするのに。
「⋯⋯⋯⋯なんで、こっちに来ないんだい」
 そう聞いたら彼女は笑っていった。
「今立ってるとこが境界線。越えると死んじゃう」
「は⋯⋯⋯⋯?」
 冗談なのか本気なのか分からない。それでも、試してみてほしくなんかない。だから僕は彼女のとこまで戻った。
「別に、いいのに」
「試されたら心臓に悪いし、一人で行くのもつまらない」
「ここまでは一人だったのに?」
「元々一人と、置いていくのは訳が違うだろ」
「⋯⋯あはは、優しいね、演奏者くんは〜」
 からかったような声、でも何故か安堵してるようにも聞こえて、やっぱりあのまま進まなくてよかった、なんて僕は思った。

5/21/2024, 3:27:01 PM