名も無き小説家

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         『イブの夜』

月明かりに照らされた夜道を一人歩く

街は21時を過ぎても賑わいをみせてる

今日は12月24日、クリスマス・イブである

帰宅中に立ち寄ったコンビニでケーキとチキンを買った

もちろん二人分を買った

マンションに着き俺は「ただいま」と言った

無論、返ってくる返事はない

それもそのはずだ

妻は病にかかり去年の冬、天国へと旅立ったのだから

俺は、先ほど買ってきた物をテーブルに並べた

毎年こうしてイブの夜を一人で過ごしている

妻の家族からは「新しい家庭を持ってもいいんだよ」と言われているが、そんな気もおきない

裏切るようで切り替えることが中々難しい

今の俺には到底できない

そう言えばあいつは昔から切り替えが早かったな

それにウジウジするような性格でもなかった

情けないかもしれない

もう少し君のそばにいさせてほしいと俺は願う

感傷に浸っていると視界がボヤケてきた

ブラックアウトしそうだ

すると声が聴こえた気がした

「メリー・クリスマス」

時計の針は0時ちょうど

イブの夜は終わりクリスマスの日付へと替わる


END-名も無き小説家-

12/25/2023, 3:51:14 AM