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『新年』

私はその瞬間、1人で部屋にいた。リビングまで行けば家族全員がいた。それは、好きな人と電話をするため。

「あと5分で今年終わっちゃうね」
「んね、ほんと早かった」
「まさかお前とこんなに話す仲になるとはね」
「そうだねえ。初めて席隣になった時は人生の終わりを感じてたよ」
「ええなんか悲しいかも」
「ふふふ、冗談だよ」

なんだかんだ言って私にたくさん話しかけてくれたあなたが大好きだよ。なんて、言えるはずなかった。彼には、彼の好きな人がいる。私はそれが誰か知っている。この恋は、捨てなきゃいけない。幸いなのか、彼はその人にほぼ一目惚れで、全く話せないそうなので、こうやって私の無茶にも笑って応じてくれる。ほんと、馬鹿だな。でも、私って多分見る目ある。彼にも見る目がある。だから今こうなってる。きっとそういうことだ。

「あっ!!」
「おー、あけましておめでとう」
「あけおめー!」
「今年もよろしくね」
「おう!よろしく!!」

新年になって、初めて聞いたのがあなたの声で良かった。もうこれで終わりにするから。だから、許してよ、神様。
その後すぐに電話を切り、布団に入った。少し冷たい。なんだか胸の辺りが苦しかった。それが落ち着いたかと思えば、次は涙が溢れて止まらない。叶わない恋ってこんなにつらいんだと教えてくれたのさえ、あなただ。
あけましておめでとう。
あなたに、あなたの好きな人に、幸せが降り注ぎますように。

1/1/2025, 11:19:06 AM