近所の海に浮かぶ小島には、赤い鳥居が建っている。
小島は岩で出来ていて、とても神様はいそうにない。
ぼくは波打ち際の岩にしゃがみ、それを眺めていた。
背景の空は灰色の雲に覆われて、ぼくの心と一緒だ。
鳥居も沈んだ色になり、胸を打つ鮮やかさは消えた。
ふと、小鳥が三匹、飛んできた。なんて名前だろう。
名も知れぬ小鳥たちが鳥居に留まって、鳴き出した。
ぼくも一緒に泣いた。小鳥たちが掻き消してくれた。
すると、瞼の裏が明るくなった。ぼくは目を開けた。
鳥居が光っている。雲を裂き、陽が顔を出していた。
赤くて、周りの青と灰色を置いてけぼりにするそれ。
それの奥から、神様が顔を覗かせたような気がした。
いっぱい泣いて、反省したから、許してくれたんだ。
ぼくは手頃な石をポケットに入れた。小島の代わり。
この石の中の小さな神様に、ぼくを観てて貰うんだ。
ぼくは生まれ変わる。二度と母さんを泣かせないぞ。
鳥居に差す光が広がっていく。ぼくは決意を固めた。
11/5/2024, 9:48:17 PM