【何もいらない】
今日は東城会六代目の誕生日ということもあり、たくさんの祝いの言葉と品物を貰った。どれもこれも有り難い。裏でなんと言われていようが大吾は祝われている事実をただ受け取った。生まれた日を誰かから祝ってもらえることは有り難いことだ。そう思うのに物足りない。
理由は分かっている。
数年経つのに未だ身体の一部を失った感覚がなくならない。喪ってもう何年経っただろう。分からない。
酒を呷る。一人になった部屋は広くて静かだ。アルコールがまわった脳が懐かしい声を思い出させる。
「大吾さん、飲みすぎはよくないですよ」
「いいんだよ、今日は」
「まったく」
人は最初に声を忘れるというが、今聞こえているこの声は本当にあいつのものなのだろうか。
「いろんな人に祝われてましたね。相手をするのも疲れたでしょう」
「そうだな、少し疲れちまった」
「水を飲んで休んだほうがいいのでは」
「いらねぇ。何も」
何もいらない。ただお前だけいてくれたらそれでよかったのに。
4/20/2026, 11:08:49 AM