「星座って増えないのかなぁ」
「……増えない、んじゃない? たぶん」
時々彼女はおかしなことを言う。頭が良すぎるが故に我々とは話が通じないのだろう、と思われているが、私には違うように思う。
「なんで? 増えてほしいの?」
「だって、星座になってるのって神話の中のすごい人とか面白い人じゃん? 私がもし星座になれるくらいすごい人になっても、この先増えないなら意味ないじゃん」
「そう……だね」
彼女の話はだいたい中心がおかしい。他の人であれば、すごい人といえば生徒会長になるとか、ノーベル賞を取るとか、まあそんなところだろう。おそらく誰も星座を見てあの人はすごいんだなと思わないし、第一どの星と星を結べば星座になるかなんて知らないはずなのに。
いつもはそんな彼女の話に疑問を持ちながらも黙って聞いている私だが、今日はなんだか気分が違っていて、素直に今思ったことを尋ねてみることにした。
「星座になるよりノーベル賞取る方がすごいんじゃない? 誰が見てもそっちの方がすごい人だなあって思うよ」
「うーん……すごい人って思われたいわけじゃないの。ただ、見られたいというか……」
珍しく言葉に詰まる彼女。悩んでいる姿はなぜだかいつまでも飽きが来なさそうで、私にとっては癒しに近かった。しかし、そんないつまでもは来ず、ようやく顔を上げた彼女の頬は少し赤く染まっていた。
「……あなたが、よく夜空を見てるから」
「……え?」
赤い頬が移る。彼女が気を惹くのは、私だけで良かったらしい。
10/6/2023, 5:59:41 AM