とうの

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光芒の彼方

今年1年で、僕らの生活は随分と変わった。例えば、すぐ終息すると思われていた未知のウイルスの流行が、多くの人を苦しめた。例えば、僕らの国の外で戦争が起きて、多くの人が亡くなった。例えば、大雨で各地が浸水して、多くの人の日常が変わった。
そして今夜、僕は妹と舟の上。父のカヌーだ。温暖化と異常気象のせいで海面がありえないほど上昇し、ここ東京は新宿・渋谷辺りまでもが海となった。だから、元々海寄りの、僕たちが今いる東京のシンボルタワーがあるあたりは、舟にのっていると目線がマンションの7、8階とほぼ同じになるほどだ。災害から7日間待っても救助が来なかったから、家の食料も尽き、仕方なく僕らは移動することにしたのだ。
街は静かで、人口が非常に減ってしまったことが目に見えてわかる。今のところ、明かりは何処にも見えない。
「お兄ちゃん、あたし、不安だけど、でも、きっとあたらしい場所、見つかるよね」
彗星がひとつ、力強く輝く尾をひいて流れた。
「うん。大丈夫。きっと、いい場所だ」
前へ進んだって、不安や恐怖などの負の感情がさっぱり消え去るわけではない。でも、その先を、未来を目指せるということは、なんて素敵なことだろうか。今は、そう思うようにしている。
「ねえ、お兄ちゃん、空が、きれいだよ」
群青の空の向こう、空と海の境界が光の線を描く。鮮やかな朝日に照らされて、波が一斉に輝きだした。


『1年間を振り返る』

12/31/2022, 2:06:55 PM