霜月 朔(創作)

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澄んだ瞳


あの日、初めて会った君は、
とても澄んだ瞳をしていた。

人に裏切られて、騙されて、
社会から弾き出され、
誰かを頼る事も出来ず、
独りで生きてきた君。

人間としての最低限度の生活さえ、
出来ていなかったのだろう。
痩せ細り汚れ切った身体に、ボロボロの衣服。
君は、目を覆いたくなる程に、
見窄らしい姿をしていた。

それでも。
君の瞳の奥は…何処までも澄んでいたんだ。

こんな私が、
君にしてあげられる事は、
僅かかも知れない。

それでも。
こんなにも穢れ切って、
余りに醜い世の中で、
その澄んだ瞳が、汚れない様に。
その澄んだ瞳が、傷付かない様に。
その澄んだ瞳が、涙を零し続けない様に。
…そして、その澄んだ瞳を、
自らの意思で、
永遠に閉じてしまわない様に。

私が、君を護るよ。

7/30/2024, 6:10:24 PM