口を開けば零れてしまいそうで、
けれど音にすれば、
それはもう別の形になってしまう。
夕暮れの街角、
風に揺れながら私を見ている。
夕陽は、遠くで響く足音と混ざり、
私の胸を、不安と甘さで満たしていく。
刹那の好奇心と、
静かな後悔のあいだに生まれた沈黙。
あの沈黙こそが、
今も私の中で膨らみ続けている。
波打ち際に立ち、
足首を濡らす泡の音を聞いても、
心の奥のあれは形を変えない。
潮風も、月明かりも、
まだ名前を与えてくれない。
言葉にならないものは、
静かに、けれど確実に、
私を繋ぎ止める鎖になる。
甘い香りと、冷たい影とを編み込みながら、
それはずっと、胸の底で呼吸している。
8/14/2025, 2:42:53 AM