『視線の先には』
君は今、逃げている。
息を切らして、走って走って、時折り足がもつれて転びそうになるのを、なんとか立て直して、逃げている。
ひとけのない街のなか。
広い道路も、大きなビルも、時間を止めたかのようにシンとしている。
不思議なほど、誰もいない。
とうとう君は転んでしまった。
もう何時間も走り続けていたのだから仕方がない。
体力も限界だろう。
気力はなんとか持ちこたえているだろうか。
激しく肩で息をして、ゼイゼイと喉を鳴らし、ゆっくりと君は振り返る。
大きく見開かれる目。
信じられないモノを見たような表情。
わかるよ、わかる。
君の夢の中に入り込めるヤツがいるなんて思ってなかったよね。
だから好き勝手やってきたんだものね。
さあ、とくと見てくれたまえ!
君の視線の先にいる僕が、どんな姿をしているのかを。
7/20/2024, 4:38:11 AM