キャンドルの火が消えた。
冬の夜。月灯りのない午前3時のことだった。
なかなか寝付くことができずに、ぼーっと天蓋越しの揺れるオレンジを見つめていた時、ふっと暗闇が訪れた。
普段なら使用人を呼んでキャンドルを変えるのだが、今日はなんだかそんな気分にもなれず、かと言って灯りのない部屋でぼーっとする気分でもなく、そっとベッドから身を起こした。
天蓋を開けて窓の方へと歩を進める。
当然、月なんて見当たる訳もなく、けれども漆黒の夜空には満天の星空が広がっていた。
それはまるで、星々が一つ一つ、空に吊り下げられた小さなキャンドルのようで、吸い込まれてしまいそうなほど綺麗な夜空だった。
「まぁ、こういう日も悪くないんじゃないかしら」
ぽつりとこぼした一言は拾われることなく溶けていく。
その言葉に肯定するかの如く、1番光り輝いていた星がきらりと瞬いた。
No.7【キャンドル】
11/19/2024, 1:33:03 PM