「一輪の花」
幼なじみの家にも赤紙が届いたと知らせを聞いた。
生まれた時から兄妹のように一緒に育ってきた彼は、ついに見知らぬ地に戦争に行く。
まだ幼かった私は戦争なんかに行って欲しくない、ずっとそばに居て欲しいという気持ちを上手く言葉に出来なかった。
私に出来たことは、彼の無事を願い一輪の花を手渡すことだった。
「これ、アンタに預けるから。…必ず持って帰ってきて。必ずよ。」
彼は何も言わずそれを受け取った。
「ん。行ってまいります。」
彼を最後に見たのは凛々しく敬礼し、去っていく後ろ姿だった。
あれから何十年も経ったある日、玄関の呼び鈴が鳴った。玄関を開けると、そこには誰も居ない、代わりにあの時あの人に預けた一輪の花があった。
2/24/2025, 10:26:42 AM