題.愛言葉
お世辞にも、私は素業が良いとは言えません。
妻がいるにも関わらず、愛人をつくり、仕事が行き詰まれば酒を浴びる。
おまけに、私は喫煙者でありまして妻が体に悪いから、と辞めるよう勧めることに耳を貸しませんでした。
私がろくでもない人間な話は、あげればきりがないでしょう。
こんな私に未だ寄り添ってくれる妻、常日頃から苦労をかける彼女へ、私はろくに伝えていない感謝の気持ちと結婚して以来、言っていない想いを伝えようと思いました。
しかし、いざとなるとどうにも気恥ずかしくなってしまい、声を掛けてもしどろもどろでまともに伝えられりゃあしない。
ああ、私はこんなにも度胸がない奴だっただろうか…。
行きつけのバーで会う女達には、流れるように世辞を吐き、口説き文句が言えるというのに。
本当に伝えたい女には愛の言葉一つも口にできやしない。
はぁ、きっと溜息を吐きたいのは妻だろうに、私は息を吐きだす。
女に愛を伝えるのがこんなにも難しく、むず痒いとは到底、思わなかった。
…いや、最愛の妻である彼女だからだろう。
10/26/2024, 3:49:48 PM