【夏の匂い】
中学から制服の変わった高校でも
君と一緒に居る時を思い出すのは
春の日も秋の日も冬の日もあったのに
いつも夏の匂いがした
茹で上がったばかりのトウモロコシの匂い
自宅前で花火した煙の匂い
バイバイのキスの感触
絡めた指の柔らかさをいつまでも触っていたかった
夏休みが始まって彼女から「好きな人が出来たから別れて欲しい」と告げられた雨上がりの夏の匂い
僕との6年間、ティーンエイジャーの季節はいつも君が居て、大切に大切にプリンセスを守る騎士で居るつもりでいたんだ
君を見送る公園でやけに纏わりつく緑の葉の匂い
落ちているセミの亡骸と自分を重ね合わせていた、こんなセンチメンタルな所が
新しい彼氏には無いと、男らしい人だと
僕の胸を君は言葉のナイフでサクッと切り裂いた
夏の終わり、新しい彼女と部屋でキスをしていた、彼女の髪の匂いを思い切り抱きしめていた夜
「アイス買ってきたの…一緒に食べよう」と
いきなりの訪問で
「無理だから今日は帰って」と告げる僕に
「私達の6年間ってその程度の物だったの?
別れて1ヶ月もしないで彼女を作るなんて
ヒドイ…」と言う
「今は新しい彼女が居るから」応えられないと言う僕にアイスの袋を投げつけた
先に去った君の涙の匂い
取り戻せない夏の匂い
7/1/2025, 1:29:35 PM