思いつきなんちゃって小話

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【月夜】

『綺麗な月が好き。特に満月が。』

そういい、
君は、今日も飽きずに望遠鏡を覗き込んでいる。




今日は月に1回許された、天文学部・屋上観測会。

部員は、幽霊部員を含めて5人。今日の参加者は、2人だけ。
天文学部は人気のない部活で、同好会状態だ。
おかげで部費はさほど援助されず、合宿は学校か、
近くの山か土手の3択である。



「うーさむ。」
冬の方が空気が澄み星が綺麗に見えるが…寒くてかなわない。耐えられず、望遠鏡を持っていた手を勢いよく自分のポケットに突っ込み、白い息を吐きながら君を見た。

毎度毎度飽きずによく見るな。
真剣な横顔で、ピントを合わせる君にそんなことを思う。

もちろん君はそんな視線には気づくはずもなく、ひたすらに月や星を見ている。

「本当に宙が好きなんだな。」

『好きだよ。大好き。』
君は、鼻の上を真っ赤にして、満足そうにニコニコ笑いながら宙を指さす。

『直接触れないし、見れない。海よりもっともっと遠い遠い存在で、なんだかワクワクしてこない?』


僕は気の利いた返事なんて思い浮かばず
「ああ。そうだな。」
と無愛想な返事を一言し、自分のピントの合ってない望遠鏡を覗くふりして誤魔化した。



2人で静かに宙を見る。望遠鏡に齧り付く。



さて、今日は何を見ようか。
金星、一等星、輝く星は沢山あるが、
やっぱり今日も月を見ていよう。

月の使者が君を連れ去りに来たら大変だから。

3/7/2024, 4:14:38 PM