黄色い洗濯機

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『愛を注いで』

あんなに大好きだったのに、時間の経過とともに君のことがどんどんどんどん分からなくなってきている。そんな自分が怖くて怖くて仕方がない。世界は君がいなくても平気な顔して回り続けるし、地球は公転したり自転したりしていつも通り正常に動き続けているのに、僕は未だ君との思い出に囚われ続けている。僕だけが君のことを忘れずにいる。そうずっと思っていたのに。いつのまにか記憶の中にそっとしまっておいた君は見ないうちにゆっくりと形を変えていき、終いには笑った時にエクボなんて作り始めている。いや、前からあったか。ん?だめだ。あんなに好きだった君の笑顔がいくら記憶を遡っても見当たらない。君は、どんな風に笑ってたっけ。どんな風に泣いてたっけ。僕が落ち込んでる時、君はいつもなんて声かけてくれてたっけ。君は酔っ払うとすぐ、なんて言ってたんだっけ。ほら、いつも口癖のように言ってたじゃん。高校生の時、帰り道でなかなか告白を切り出すことができず、意味もない話を続けていた僕に、君はなんて言ったんだっけ。ねえ、なんて言ったんだっけ。あれすごいドキってしたのにな。ねえ、なんだっけ。僕が今も記憶の中で愛し続けている君はもはや本当の君じゃないのかもしれない。どんなに愛を注ごうが、本当の君じゃないなら意味なんてないのに。意味なんてないって分かりきってることなのに。それでも亡くなった君を中途半端に忘れることができずに、今も僕は記憶の中の君に愛を注ぎ続けている。君が僕に、愛を注いでくれるのをゆっくりと待ちながら。
「たっくん!もう一杯!」
「ちょっともう飲み過ぎだって、これで最後だからね」
「はーい!たっくんはなんだかんだ言っていっつも付き合ってくれるね」
「まあ、そりゃあ、彼氏ですから」
「ふふふっ。たっくん!◯◯◯◯◯◯。」

12/13/2023, 4:05:32 PM