『セーター』
一年生のときから仲良くしていた親友が海外に旅立っていった。親の都合もあるけれど、そもそも頭がいいやつだったので今の学校よりレベルの高いところへ編入学すると決めているらしい。彼はゆくゆくは国立大学へと進むのだと野望を口にしていた。英語を話すことすらハードルが高そうなのに不安も迷いもなく夢を話してくれた親友はいつもバカ話をしている姿からのギャップも相まってなんだか遠い存在に感じられて、別離することよりも寂しく思ってしまった。
もう会う機会もないのかもしれない。漠然とそんなふうに思い、ぼんやりと時を過ごしていた自分のもとに海外から荷物が届いた。差出人は親友から。
『俺たちズッ友だょ』
荷物に付いていた簡単なメモにはそう書かれていて、いつか似たようなことをプリ機でも書いていたなと思い出す。そして梱包を開けてみると、赤と緑のビビッドな色づかいにサンタクロースがデカデカと表現されたセーターが入っていた。
「ダッッサ!」
思わず口にし、身震いしてしまうほどのダサセーターだった。親友がどんな顔をしてこれを見つけ、買って、そして自分に送りつけてきたのか逐一想像できてしまう。ならばやることはひとつしかない。クソダサいセーターを身に纏った俺はアウターも着ずに家を出た。クリスマスには早すぎるし、独特な色づかいのそれはすれ違う人たちからの注目を浴びに浴びたが、プリ機へと向かう足に迷いはなかった。
11/25/2024, 3:24:26 AM