「そうだ、鎌倉行こう」
クイズ番組で鎌倉時代がテーマの問題が出題されたときだった。突然、君が言った。
「いざ鎌倉だよいざ鎌倉!」
君はグッと拳を握り、えいえいおーと高く掲げている。テレビを見ていて鎌倉に行きたくなったんだろうなあ、と理解はできる。君がどこかに行きたいというときはいつもこんな感じで、理由は結構単純なのだ。
「鎌倉って具体的にどこ?」
「え、寺?とか?神社?なんか歴史的っぽいとこいっぱいあるじゃん!そういう感じで!よろしく!!」
そして、いつもこう漠然としていて、具体的な行き先は僕に丸投げなのである。
「なるほど、わかった。来週の日曜でいい?」
「オッケー!!!」
こんな感じで突然決まった鎌倉行き当日。僕らは鶴岡八幡宮へとやってきていた。
「参道長っ!」「鳥居立派!」「建物すっご!!」
参道から歩きながら、君が感想を口にする。その笑顔は輝いていて、全身から“今楽しいですオーラ”が出ている感じだ。
「この場所は源頼朝公とゆかりの深い場所なんだよ。元々は頼朝公の祖先が――」
僕が話すうんちくも「ほう、ほう」と楽しげに聴いていた。ちゃんと理解してくれているのかは定かじゃないが、こうして楽しそうに聴いてくれると調べた甲斐があるというものだ。
そんな感じで、鶴岡八幡宮に参拝した後も鎌倉の名所をいろいろと周り、あっという間に夕方になった。
「いやー、めちゃくちゃ楽しかった!!」
帰り、駅のホームで、君が笑顔で言う。「僕も楽しかった」と言うと、君はまた嬉しそうに笑った。
「わたし、きみと一緒だと、特別たのしいんだよ。いつもいろいろ考えて連れてきてくれてありがと!」
始まりはいつも突然で、特に深い理由もない。具体性は何もなくて、いつも僕が必死で調べて計画を立てて、君を連れて行くことになる。
それでも、僕がこうして君に振り回されてもいいと思えるのは、君がいつも最高の笑顔を見せてくれるから。
君は次、どこに行きたいと言い出すだろう。その場所で、どんなふうに楽しんで、どんなふうに笑ってくれるのだろう。
次の始まりが、今から楽しみだ。
10/20/2024, 12:45:04 PM