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この道の先に…

私の左足首に奇妙な薄い痣がある。

名前と生年月日だけしか情報は伝えていないのに、すぅーっと、顔を見てその人は言う。

あなたはドイツの古い城主と結婚しているけれど、幸せではなく、城の塔に幽閉されています。

城主はあなたの事を愛しすぎるせいで、誰にも逢わせず左足に足枷を付けて自由を奪ってまで閉じ込めていたようです。その名残がありますね…。

髪が長く、色が白く、揺れるような耳飾りをつけていて、あなたの体が弱かったせいもあって歪んだ溺愛をされてしまったんですね。

それが、私の前世だと言う。

結局、前世の私は自害してしまったらしい。

現在私は 日本人として産まれ幼少期は体が弱かったものの 元気に暮らしてきた。

前世は一度だけという事ではないらしい。

何度も様々な時代と国を渡り歩いて今に辿り着いて来たのだとすると、これまで私が出会い、教わり、学び、悩み、考え、確かめながら進んだこの道は、とてつもなく、愛おしい。

もう二度と会うことが出来ない恩師、先生、友達、仲間、親戚の叔父、叔母、祖父、祖母…

あちら側に渡ってしまって、私が忘れない限り待っていてくれていると信じている人達。

いくつになっても、壁にぶち当たり、悩んで泣いて悔やんで歯を食いしばり、壁を見つめて途方に暮れる日々が続くけれど、それでも生きているから、楽しい日々。

この道の先に、どれ程の苦難や痛みが待ち構えていてもその何倍もの幸せな思い出を持っているから、泣き笑いながらも、倒れるなら前のめりで踏み出していける!

振り返って見れば、これまでの道の遥か彼方に沢山の前世が、私の背中を押してくれている。

前世で学び取れなかった苦手な事、モノ、人、全てをこの道の先でぶつかっても 進んでいく。

明るい光が向こうから差し込んできているから、安心して進んで行こうと思う。

歩幅は、小さくなったとしても…



*読んで下さり ありがとうございます*



7/3/2023, 10:39:12 AM