—沈黙の恋—
私は、生まれつき声が出せない。
そのせいでみんなとの会話にも入れないし、私と関わる度に周りの人が遠慮しているのがわかる。
だから、友達は一人もできなかった。
「東條」
隣から男子の声がした。
そちらをみると、彼は両手を使って『おはよう』と言っていた。
私も手話で『おはよう』と返した。
高校に入ってから、初めて会話ができるようになった。
隣の彼は、手話ができる。
彼の母親がろう者のようで、手話を必死に勉強したと以前に言っていた。
『小テストの勉強した?』
『してきたよ。あなたは?』
『ゲームに夢中で、してくるの忘れた』
彼は眉を下げて、肩を落とした。
私は思わず笑みをこぼした。
楽しい。誰かと会話をするということが、これほど素晴らしいことだとは知らなかった。
『自業自得だね』
『テストで出そうなところ、教えてくれよ』
『いいよ』
私は、教科書を両机の中央に開いておいた。
彼との距離が近くなって、心臓の鼓動が速くなる。
この気持ちに、私はもう気づいている。
しかし、それを彼に伝えて拒まれたら。彼と会話できなくなってしまったら。
私は元の暗い生活に戻ってしまう。
いつかこの気持ちは伝えたい。
でも今はまだ言えない。だから、胸の奥に大切にしまっておこうと思う。
お題:伝えたい
2/13/2026, 5:35:43 AM