『願いが1つ叶うならば』
「将来について」
そんなことを昔、高校の授業でやった記憶がある。
何の科目かは忘れてしまったが、家庭科だか総合だかそこら辺だろう。
その時、君はなんて言ったんだっけ。
僕はもう忘れてしまった。
今更その答えはどこにもない。
海の見える霊園。そこに君は眠っている。
いつの間にかあの問から月日が経ち、そしていつの間にか君はどこかに行ってしまった。
大学4年になり就職に頭を悩ませていた僕はふらっと彼女に会いにここへ来た。
自分でもよく分からないが、何となく足を運んだらここへたどり着いた。
「ねぇ、君はあの時なんて言ったんだっけ」
そう聞いても答えは返ってこない。
少し冷たい潮風が僕の頬を撫でる。
彼女は高校を卒業する前に病気で死んだ。
桜のつぼみができた頃の浮き足立つあの時期に、彼女はみんなより一足早く旅立ってしまった。
僕が今、将来について考えるなら。
できることなら彼女のいる世界を生きたかった。
君の笑顔を1番近くで見たかった。
さっきより少し暖かい潮風が僕の髪を揺らした。
あぁ、思い出した。
君はあの時こう言ったんだ。
「君と一緒に生きたい」
ねぇ、神様。
願いが1つ叶うならば、僕は彼女の夢を叶えて欲しかった。
2025.03.10
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3/10/2025, 12:57:18 PM