カメラをかざす。
小さな画面に縁取られる被造物が、寝息を立てている。
シャッターを押す。
途端、ふっと画面が黒に堕ちた。
最後のシャッターは、押せていただろうか。
それだけが気がかりだった。
冷たい霜が土に聞き慣れない音を作る。
一歩、一歩
その地を踏み締めるたび、
ぱり
しゃり
小さな音が弾ける
顕微鏡で見たくなるような、透明さの中に不思議が詰め込まれた霜。
触れればかじかんで、指先が腐り落ちる。
でも、ウジは集らない。
氷点下に生きるウジも菌もいないから。
冷凍保存された指先が、そのままに時が止まるだけ。
ずるい。悔しい。
誰なんだ。
そんなことを言うのは。
好き。嫌い。
誰の声なんだ。
鼓膜を剥がせば、
嗅粘膜を剥がせば、
脳を破壊すれば。
何も感じずに済むのか?
お前は、誰なんだ。
5/9/2026, 3:24:58 PM