"静かなる森へ"
どれほどの時間が過ぎただろうか。
木々の隙間からのぞく蒼闇に、夜明けが始まったと悟る。
辺りが僅かに明るくなった頃、足元から発生した霧が見る間に高さと濃さを増し、視界一面を白く染めた。
灯を消して、木々に背中を凭せ掛ける。
視界が戻るまではこの場を動かない方が良いだろうと考え、静かに目を閉じた。
森の真ん中にあるという湖を見に来たはずだった。 問題は、自分の方向音痴を考慮していなかったこと。真っ直ぐ最短距離を選んだつもりが、とんでもない場所に入り込んでしまったようだ。
ひんやりした空気がふと緩むのを感じ、目を開ける。いつしか霧は晴れ、明るい陽光が射していた。
勢いをつけて背中を木から離し、歩き出す。
目的地まで後少しだ、きっと。
5/10/2025, 11:29:02 PM