ソノレソレ

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『1年30日』

風に身を任せわたしは空へ、、、旅立とうとした。
けれど、やはり泣き虫で優しいわたしの大切なあの子が心配なのでまだまだこの世に残ろうと思う。
あの子と出会ったのはまだ肌寒い春の日、木の木陰でひとり座り込んでいる可愛らしいあの子にどこか惹かれ「わたしの名前は瀬良音御、わたしとお友だちになりましょう!」と偉そうに言ってしまったのが今でも恥ずかしい。昔から偉そうにその人の気持ちになったように発言してしまうのはわたしの悪い癖だ。この悪癖のせいでわたしは小学4年にもなっても友だちと言える存在は誰一人といなかった。
そんなわたしに引かずただ驚いたように一言
「う、うん。僕も友だちになりたい」そうはにかみながら言ってくれた。あの時の嬉しさは今でも鮮明に思い出せる。
 友だちになったわたし達は出会いが唐突すぎたのでいま一度、自己紹介から始めた。
「ゴッホン、もう一度いうわね。わたしの名前は瀬良音御。好きな事はボードゲームに絵を描くこと、それから、、、なんかめんどくさくなってきたわ。どうせこれからずっと一緒にいるのだから後から知っていけばいいのだわ。それよりあなたのお名前を一度も聞いていないわ、お名前きかせてちょうだい。」言ってしまったあとに少し後悔した。何が「これからずっと一緒にいる」だ。ずっとや永遠なんてないことなんてあの頃のわたしも知っていたはずなのに、それに最終的には他人任せな態度やめようて何回も後悔したはずなのにまた口に出してしまった自分に恥じた。
そんな傲慢な態度のわたしにあの子は怖がりもせずに答えてくれた。本気で本当に嬉しかった。
「ぼ、僕の名前は川澄陽一」
「川澄陽一ね覚えたわよ。貴男、好きな事とかないのかしら?」
「す、好きなことはえっと、その」
「?言いづらいことなの?‥‥なら、別に無理して言う必要はないわよ」
「‥‥女の子の格好すること。‥き、気持ち悪いよね。ごめんなさい。」
「何を謝る必要があるの?女の子の格好するのが好きなんでしょ?もっと堂々としなさい何も恥じるべきことはないわ。」
「‥でも、皆がお母さんお父さんが気持ち悪いて」
「‥‥わかった。貴方のこと否定する奴らはわたしが成敗するわ。だから、貴方は全力で好きな事をしなさい。」
「な、なんで?どうして僕に優しくしてくるの?」
これがあの頃のわたしに出来る恩返しだったこんなわたしと友だちになってくれたあの子にわたしは何としてでも幸せになってもらいたかった。
 それから色んなことがあったあの子を馬鹿にする奴らを成敗したり。わたしの誰も知らないお気に入り場所に連れて行ったり、あの子を馬鹿にする奴らを成敗したり。あの子が好きそうな服をプレゼントしたり、あの子を馬鹿にする奴らを成敗したり。あの子と服を交換してみたり、あの子を馬鹿にする奴らを成敗したり。本当に色んなことが起こった。あの子と出会えて毎日が楽しかった。この時間が永遠に続けばいいと何度も思った。
 でも、やはり人生はうまくいかないものだと思った。
それは、中学にあがった頃だった。
ただでさえ可愛らしいあの子が中学にあがった瞬間、もっと可愛いらしくなってしまった。
あの子の魅力に気づいた周りの奴らは瞬く間にあの子に群がってしまった。そのせいであの子はわたし以外の友達が沢山できた。悔しいし寂しかったけど沢山の人に囲まれ幸せそうに笑うあの子を見たらなんだかわたしも幸せな気分になった。
 高校になった頃は本格的にあの子と会う機会がなくなった会える日といえば週1でわたしのお気に入りの場所で近況報告をしあうぐらいだ。それに、あの子は最近、男の人と付き合ったらしい本格的に寂しくなったし本当はもっと一緒にいたかったけどただの友達の一人であるわたしがあの子を縛る道理なんてないし、いい加減、傲慢な態度を直したかったのでここは大人になってあの子の幸せをただただ祈った。
 この時の判断を後にわたしは深く後悔した。
それは、あの子と付き合った男の人があの子をレイプした後に男の人の友人を呼び集団であの子をレイプをしたと噂になり始めた頃だった。わたしが噂を聞きつけあの子のところへ行った頃には全てがもう遅かった。あの子の幸せを願い選択した行動があの子を不幸にさせた。あの子の幸せを守ろうと出来る限りのことをしてきたのにわたしのたった一つの選択で全てが泡のように消えてしまった。
 あの日からあの子は狂ったように他の人と付き合っては別れるを繰り返した。わたしが止めようとしてもわたしのことが目に入ってないのか、それともあの子を守ることが出来なかったわたしなど忘れてしまったのかわたしのことを見ようともしなかった。虚しかった悔しかった悲しかった。あの子のために何もできないわたしがもっと嫌いになった。

‥‥‥そしてわたしはナイフを胸元から深く刺された。別に自分を刺したとかあの子に刺されたとかじゃない。
沢山の人の感情を弄んだあの子の被害者である1人があの子に向かって襲いかかったのを庇ったからだ。
後悔はぜったいにしない、だってあの子の大切な未来を守ったから。
 きっと今がどんなに辛くてもあの子なら大丈夫。きっと明るい未来があの子にはいつか訪れる。わたしが人生で1番辛くて死んでしまいたいときに貴方という光を見つけたみたいに。
だから、泣かないで。
「大好きだよ、優」

5/14/2024, 4:59:38 PM