にーふ

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 円安の機運に当てられて、日々観光地に外国人が訪れている。その人数は減ることなく、むしろ日に日に増えているのではないかという印象すら受けてしまう。
 かく言う筆者の現在の住所周辺にも、有名な観光地がいくつか点在するため、外出すると必ずと言っていいほどに観光客と出会うことになる。
 バスに乗れば、電車に乗れば、通りを歩いてさえ、彼らはぎゅうぎゅう詰めになっている。そして、たいていは大きなキャリーケースを引きずったり、買い物袋を担いでいたりするのだ。

 彼らの存在は、ふだん生活する分には、正直に言って鬱陶しいことこの上ない。少し離れたバス停に向かおうとすれば、席に座れることなど非常に稀だ。すし詰め状態の車内は大きなストレスの源であるし、繁華街などは人が大河のように流れていく中をかき分ける必要がある。

 よしんば人の多さがストレッサーにならなかったとしても、観光地のリソースが観光客の増減に左右される形となるのもあまり現地住民には好ましくない。もし彼らが多すぎれば、必要なものが近所のコンビニからすら消える可能性があるし(筆者は何度も苦しめられた)、少なすぎると値引きワゴンにうずたかく積まれる土産物が出現することとなる。

 その流れを読むのは、経営者の仕事だ。特に昨今の情勢の中では、名勝は常にオーバーツーリズムの影響下にあるほどで、土産品や移動手段はいくらあっても足りていない。
 一方で、ひとつ入り組んだ通りに入れば、そこでの消費は意外なほどに落ち込んでしまう。観光客の大半はメインストリートばかりを見るのだ。隠れた名店や、地域密着の商売など、目も向けられない。

 では地元住民らは、苦しいだけで何一つ好影響を受けないのか? それもまた、違う。
 観光客たちが落とした「観光料」は、公的機関や企業をめぐって、確実にサービスの向上や、インフラの整備などに還元されることになるのだ。

 もちろん、これは大まかな流れであって、本当は観光の過程で発生したダメージの補修や、観光会社への報酬なども必要となってくる。そこのバランスを見誤れば、たやすく循環は滞ることになるだろう。

 なんにせよ、今日も筆者はそんなバランスの中で生かされている。……バスの中、ギュウギュウなバランスの中で。



目標文字数 900字
実際の文字数 956字

主題「あなたがいたから」
副題「経済・企業」

バカサイコロのおかげでバチクソ浅識な分野を書くことになる、これも運命か……(やれやれ系)クソが

6/20/2024, 12:25:48 PM