正しいことをした数だけ、人は孤独になる。
悲しきかな、この世の真理。
厳格な両親に育てられた僕は、幼い頃から規律というものに対して酷く固執していた。ルールの大切さよりも重要だったのは、両親に叱られないことだった。
それは次第に、親の目が離れても「誰かに見られるのではないか」「親に告げ口されるのではないか」という漠然とした恐れに変わって――僕はルールを破れなくなった。
そんな僕に待ち受けていたのは、「カタブツ君」という蔑称と、そんな僕にルール違反をさせようと悪ふざけしてくる奴らとの時間以外の、孤独。
几帳面に磨かれている黒いランドセルにしまわれた憂鬱を背負って、今日も家路を辿る。
時間がもったいないからと、成績優秀な彼は赤信号を渡った。僕が青信号を待つ間に、彼は見えなくなった。
みんなが待っているからと、スポーツ万能な人気者の彼女は歩道で自転車を飛ばした。僕が歩く間に、彼女の背中は遥か遠くまで行った。
馬鹿みたいに規律違反を恐れて僕が躊躇している間に、友人らは奔放ともいえるその自由さで、時に規律の防壁を蹴破りながら先へ進んでゆく。
僕がどれだけ律儀に守ろうとも、規律とやらは僕に寄り添うわけでも、温かい感情をくれるわけでもない。
くだらないと思った。まだ間に合うだろうか。
――今なら、追いつけると思った。
「待って、僕も今行く――!」
僕の額に、アスファルト。
じっとりと、何かが乾いた地面に染みている。
ああ、また。
遠ざかっている。
君たちとの距離が、空いている。
【距離】2024/12/01
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【お詫び】
体調不良と学業により、しばらく投稿をお休みさせていただいておりました。ご心配、ご迷惑お掛けいたしまして申し訳ありません。幸い全快いたしましたので、無理のない範囲でまた投稿を再開していこうと思います。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
Sweet Rain
12/2/2024, 9:59:54 AM