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目を閉じている。
舟に当たる波の音がチャプチャプと、耳を優しく刺激する。
ずっと遠くからカモメの鳴き声が聞こえてくると、体が自然とソワソワしてくる。
私は、これから今という時間を満喫するのだと実感している。
ゆっくりと目を開けると、目の前には海と空が光り輝いていた。
吸い込まれそうになる私の意識を上に向けると、雲が二つだけ浮かんでいた。
親子だろうか。
後ろを振り返る。
仲間たちが私を見ている。
水面の揺らぎに合わせて、光の粒がキラキラと踊る。
“いってきます”と手でサインを送る。
“いってらっしゃい”と返してくる。
私は静かに海へと潜った。
透き通った海の世界は、私の心を簡単に鷲掴みにする。
水深十メートル程潜ると、珊瑚礁の団地。
色とりどりの珊瑚の屋根から顔を出す小魚たち。
太陽の光が海底まで差し込んで、ポカポカと暖かい。
ここは立派な水中都市だ。
様々な住人たちの様子を見ながら遊泳していると、小さなオブジェが目に付いた。
そのオブジェをよく観察してみると、その正体はすぐに分かる。
苔がビッシリと張り付いた岩。
その岩の周りを鳥のように飛び回っているのは、鱗がキラキラと光るとびきり小さな小魚たちだ。
天然のアクアリウムを発見したこの喜びを仲間たちにも伝えたくて、上を見上げた私の目に飛び込んできた光景。
それは酸素ボンベから出た空気の粒が、水中都市を明るく照らすシャンデリアのようにピカピカと光っていた。

『カラフル』

5/2/2024, 12:33:10 AM