「それってまるで、呪いだね。」
うるさい、うるさい、うるさい。
「シンデレラってさー。」
友達が話し始めた。私は笑顔で聞く。
「魔法でドレスアップされた美しい姿。普段のボロボロな姿。どっちが本当の姿なんだろうね。」
「そんなの魔法で変身した姿でしょ。」
内面の美しさが評価され、それに見合った姿になったんだ。つまり前者に決まってる。この世界は内面が醜ければ何も与えられないのだ。
「それがどうしたの?」
「君は、本当の自分に気付いてる?」
「…は?」
私の顔から、笑みが引くのを感じた。
「君を見て思うんだ。内面を磨きすぎて、すり減ってるんじゃないかって。」
「アンタに、何が分かるってのよ。私は、!」
内面の美しい、おとぎ話のお姫様でいないといけないの。じゃないと、誰も私を探してくれない。母親にも見捨てられてしまう。
「…私は、愛されたいの…。」
私は泣いていた。
「それが君の思う愛か。それってまるで、呪いだね。」
「うるさい!無償の愛を貰って生きてきたくせに、私の何を語ろうってのよ!」
もう、取り繕う事も出来ない。叫ぶ様に出た言葉を聞いて、彼は心底嬉しそうに笑った。
「…やっと、本当の君に出会えたよ。」
私の中の怒りは、水を掛けられた様に消えていた。その代わりに、涙は加速していった。
「君の呪い、分けてよ。君になら僕は呪われても良い。」
時計の針が重なって、深夜を告げる鐘が鳴る。魔法が解けても、この呪いは解けない様にと願った。彼を縛ってしまう呪いだったとしても。
9/24/2025, 2:57:47 PM