snow

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【お題:嵐が来ようとも】
「ねえ、先輩」
 隣で本を読んでいた背の高い男に話しかける
「おや、どうしたんだい?」
 彼は疑問を含んだ声でことばを投げ返す。
「先輩はずっとここにいてくれますか」
 ひどくわがままな質問を先輩に投げ掛ける
「うん。いるよ。急にどうしたんだい?」
 ひどく優しい声色でそう言う。
「先輩が卒業したらここにきても何処に行っても孤独だ。とそう思うんです」
「ふむ、確かに卒業すれば1人になるがそれは元からだろう?今も孤独なのは変わらないさ。」
 優しい声色で私を説得させるような、いや、説得させられるような声だと感じる。
「...確かにそうなんですけど、先輩の優しさに触れて私、壊れたみたいです。」
「まるで自分がロボットであると言うような言いぐさだね」
 ロボット。それが私を言い表すのにぴったりだと思う。先輩は私が自分のことをロボットって言うのはよくないと
 思ってるみたいだけど。
「...何も感じなかった私が先輩と会えなくなる。それだけのことに心が揺り動かされるなんて不思議な感覚です。
 この気持ちはなんでしょう。こんなの辞書にも乗ってませんでした。」
「その気持ちはね、恋って言うんだ」
「でも私、先輩のこと特別好きじゃありません。」
 おかしいと思って否定すると先輩は苦々しく笑った。
「今は分からないかもだけど、いつか気づいてもらえるといいな」
「そう言うのなら、先輩は私のこと好きなのですか?」
「うん。そうだね。キミのことが大好きだよ」
「じゃあ、例えどんなときでも屋上で会おうよ」
「もちろん、キミが来るまで待ち続けるよ。例え、嵐の時でもね。」
「本当だね。」
「嘘は滅多に着かないよ。」
「...私、先輩のことずっと待ってるから。じゃ」

 そう言って屋上を立ち去る。少し顔が暑い気がするけど、きっと残暑のせいだろう。

7/29/2023, 12:23:03 PM