江戸宮

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寝てもさめても、はたまた眠れないほど夢中になるような相手に生まれてこのかた出会ったことがない。
学生時代は教室のすみで勉強ばかりしていたせいかこの歳になっても恋愛というものには無縁だ。
教師という職業についているのだから、自分を好いてくれる生徒はもちろん可愛いとは思うが。
恋愛対象かと言われればそれは別。それはそれ、これはこれというやつだ。

「なぁんで俺なのかねぇ…」

淹れたてのコーヒーを一口飲んで校庭に目をやる。
元気に走り回る生徒の中でも一際楽しそうに走っている女の子。
毎日欠かさずに俺の所に来てくれるものだから遠くからでもすぐに分かってしまう。
俺と話していたって楽しくもなんともないだろうに彼女は俺の一言一句を聞き逃すまいとやけに真剣な表情で、俺のやたら長い話を聞いてくれる。
俺も変わり者だと思うが俺なんかを好いてくれる貴方も相当変わり者ね、などと至極失礼なことを考えながらコーヒーをあおった
俺もいい歳なんだ。
26はもうおじさんの部類に入るのかもしれない。
そろそろ眠れないほど頭を悩ませるような相手に一度は出会いたいものだ。


2023.12.5『眠れないほど』

12/5/2023, 2:07:54 PM